リサイクルセンター構想についての提言

多田 毅 (TADA Tsuyoshi)

■以下は、細倉リサイクルセンター構想(宮城県・細倉鉱山)に関連して三菱マテリアルの方への私信として書いたものです。


 現在の日本の、千年以上前の木造宗教建築が現存する一方、わずか数十年前の産業遺跡がその場所を発見することさえ困難なほど荒廃しているという現状に対し、どうにかすべきではないかと私は考えつづけています。
 しかし一方では、忘れ去られるのもやむを得ないのではないかと感ずることもあります。
 最近は、日本ナショナルトラストの活動など(残念ながら産業遺跡はほとんど保存対象になっていないようです)にも興味があります。
 また産業考古学会というものの存在を知り、時間ができれば参加しようかとも考えています。

 これまで多くの鉱山を訪れ、鉱山の町としての歴史と誇りを後世に残さんとする試みを目にしてきました。
しかし、私の心を打つのは、レーザー光線に彩られた観光坑道や奇麗にディスプレイされた記念館でなく、赤茶けた山肌、そびえる煙 突、谷間に並ぶ住宅などの、ありのままの鉱山の姿です。
 私はしばしば(特に鉱山などに興味のない)友人と共に旅行することがありますが、彼らも同じことを感じると言います。しかし、それらの景色が時間とともに失われることを防ぐこ とはできません。また友人達も、「多田の気持ちは理解できる。俺も何も無い鉱 山跡に連れてこられても別に悪い気はしないし、考えさせられることも多い。ただ、彼女と来るところじゃない。まして子連れ家族で楽しむところでもない。」 と言います。

 何の経済的メリットも無いのに町・遺跡・坑道などを整備・保存することはできないでしょう。
 集客のためであれば、いわゆる「物見遊山」の対象としての観光資源化を行わざるを得ないことも事実です。お子様向けのアトラクションなどを否定するつもりはありません。
 荒れ果てて忘れ去られるよりは、一人でも多くの人に足を運んでもらうことの方が重要であると思います。

 私自身は、産業遺跡の保存は単なる懐古趣味でないと考えているのですが、残念ながら非生産的出費を国や自治体に期待できるほど、その学術的価値が認められているわけではありません。
 もし仮に、私が同じ土木でも計画学の分野に進んでいたなら、きっと鉱山集落の再開発などをテーマに選び、産業遺跡の学術的価値(価値の有無自体に興味は無いが、その保存の意義を公的に認知させるためのオマジナイとして)を周知徹底することに力を尽くしたことでしょう。

 さらなる(希望的)可能性は、かつての産業の痕跡・遺跡が、真の意味での観光資源となることです。
 安っぽい虚飾などなくても、多くの人を惹きつけることができるのであれば、人々は鉱山の果たした役割をも忘れることはないでしょう。

  --- 略 ---

 こちらについては、まったく別の観点から、興味深い試みだと思います。全くの素人考えですが、もともと用地、用水、電力、輸送手段などの問題が解決済みの大鉱山であれば、比較的容易に実現可能なのではないでしょうか。
 さらに、その公開の方法によっては、小・中学生に対しても十分に説得力のある施設となるでしょう。

 たとえば広島の原爆記念館は、暗い内容と飾り気の無い展示にもかかわらず、子供から大人まで見る人の心に強く訴えかけるものがあります。
 あれほど深刻でないにせよ、明治以降の産業構造転換の歴史を振り返り今後われわれの歩むべき道を考えることは、同様に子供から大人まですべての人が真剣に考えるに値する問題であるはずですし、またそのような認識が徐々に広まりつつあるのではないでしょうか。

 多くの鉱山関連の記念館を見てきましたが、自らを否定する展示を見たことはありません。強制連行、恐怖政治、鉱害など、鉱山には多くの否定的側面があることは周知の事実です。にもかかわらず、それらの問題を正面から取り上げた展示をすることはタブーとなっているようです。
(私の知る唯一の例外は、宮城県三本木町の亜炭記念館です。ここでは鉱害と対策の歴史、そして現状に関する展示が全体の1/3近くを占めています。)

 しかし、すべての工業製品の源であり重厚長大産業を連想させる鉱山において、自らがリサイクル(どうもこの言葉は軽々しいイメージが拭えませんが)の重要性を唱えることは、逆に強い説得力を持つこととなるかもしれません。
 鉱山跡地のリサイクル施設が今後のさらなる産業構造転換のシンボルとなるというのは、良い意味で象徴的でかっこいい構想だと思います。

 余談になりますが、私はいつも大手旅行会社に勤務する友人と一緒に旅行しています。彼は、彼個人の感じる魅力、世間一般の人々が感じる魅力(しかも世代別に)、旅行会社としての魅力(収容能力、施設の整備状況等)などを冷静に評価し、私に話してくれます。
 それを聞くと、観光地として客を集めることは大変に難しいことであると実感します。

 先のリサイクル施設の例であれば、大人の鑑賞にも堪え得る説得力のある施設となれば、宮城県内の小・中学校の社会科見学コースになり得ると思います。 周辺施設(マインパークなど)と合せれば勉強半分観光半分の日帰りコースとして魅力的だと思うのですが。



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